当オフィスでは身体の状態を判断するための最も重要な指標として自律神経の働きをモニタリングしています。
具体的には、皮膚の表面温度を計測することで皮下を流れる血流の状態を観察しています。
全身の血流は、自律神経によってコントロールされており、表面温度を繰り返し計測することで、その人特有の自律神経の状態を把握することが可能です。
自律神経失調症という言葉を聞いたことがある人は多いかと思いますが、そもそも「自律神経」がよく分からないという方のために自律神経についてお話ししたいと思います。
自律神経とは
自律神経とは、私たちが意識的に制御できない体の機能を自動的に管理する神経のことです。
例えば、心臓の鼓動や呼吸、体温の調整、食べたものを消化する胃や腸の働きなど、日常生活で意識せずに行われている体内のさまざまな活動は、自律神経によって管理されています。
この神経が正常に働くことで、私たちの体は外部の変化やストレスに適応し、健康な状態を保つことができます。自律神経は、大きく交感神経と副交感神経に分かれており、それぞれが異なる役割を担っています。これらがバランスを取ることで体の状態を整えています。
交感神経の役割
交感神経は、体を「活動モード」にする神経です。特に、緊張したり、ストレスを感じたり、体を動かす必要があるときにこの神経が優位になります。
例えば、スポーツをしているときや、学校のテスト前にドキドキするのは交感神経が活発に働いているからです。交感神経が働くと、心臓が速くドキドキして、呼吸が早くなり、体全体にエネルギーを送るために血液の流れが速くなります。このように、体は素早く動ける状態に準備を整えます。
また、危険な状況やストレスがかかると、交感神経は「闘争か逃走か反応」と呼ばれる仕組みを働かせます。これは、体が危険を察知したときにすぐに逃げるか、戦うかを決めて素早く行動できるように体を準備させるものです。
例えば、突然犬に追いかけられたとき、すぐに走り出せるのは交感神経が素早く働いて体を動かす準備を整えたからです。
交感神経が働くと、エネルギーの供給も効率的に行われます。肝臓は交感神経からの指令を受け、血糖値を上げて、筋肉がすぐにエネルギーを使えるようにします。
また、消化活動は一時的に抑えられ、今必要なエネルギーを筋肉や心臓に優先的に送るために、体内で調整が行われます。例えば、緊張しているときにお腹が減らなくなるのは、交感神経が消化活動を抑えているからです。
けれども、交感神経が過度に働きすぎると、体の緊張状態が長くなり過ぎて頭痛や肩こり、動悸などの不調を引き起こすことがあります。
例えば、学校や職場の人間関係などにより精神的ストレスをいつも感じているような場合、交感神経がずっと優位な状態が続き、体調不良が起こりやすくなります。

副交感神経の役割
一方で、副交感神経は、体を「リラックスモード」にする神経です。副交感神経は、特に体が休息や回復を必要としているときに優位になります。
例えば、リラックスしているときや、食事をしているとき、寝る前などに副交感神経が働き、体を落ち着かせます。心臓の鼓動はゆっくりになり、呼吸も穏やかになって、体全体がリラックスして回復できる状態に入ります。
副交感神経が活発になると、消化器官の働きが高まり、食べた物を効率よく消化し、栄養を吸収する手助けをします。
例えば、食事の後にリラックスしてお腹が温かくなる感じがするのは、副交感神経が消化活動を助けているからです。食べ物の消化が終わると、その栄養を体中に送ることで、エネルギーを蓄えて回復します。
さらに、夜寝るときには、副交感神経が体温を下げ、心拍数を落ち着かせ、深い眠りに導いてくれるため、疲れた体をしっかり休めることができます。
また、副交感神経は免疫システムにも影響を与えます。体がリラックスしているとき、副交感神経が活発になり、免疫機能を高めることで体を病気から守る働きもあります。このため、十分な休息を取ることは健康を維持する上でも重要です。
しかし、副交感神経が過度に働きすぎると、体がだるく感じたり、朝起きられない、気分がすぐれないといった症状が出ることがあります。

交感神経と副交感神経のバランス
交感神経と副交感神経は、お互いに対照的な働きを持っていますが、状況に応じてバランスを取りながら私たちの体を調整しています。
日中、私たちが学校や仕事で活動しているときには交感神経が活発に働き、体を元気に動かしてくれます。反対に、夜や食事の後、休息が必要なときには副交感神経が働いて体を休ませ、回復させます。
このように、交感神経と副交感神経のバランスがうまく取れていることで、私たちは健康を保ちながら毎日の生活を送ることができるのです。
しかし、現代の生活では、ストレスや過労、睡眠不足などが原因で交感神経が過剰に働き、副交感神経が十分に機能しないことがよくあります。
これにより自律神経のバランスが崩れ、疲れが取れない、イライラする、寝つけないといった不調が起こることがあります。
このような状態が続くと、自律神経失調症と呼ばれる体調不良を引き起こすこともあります。

自律神経が乱れるとは
自律神経が乱れるとは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、どちらかが過剰に働いたり、逆に機能が低下したりする状態を指します。
現代社会では、ストレスが原因となることが多く、特に仕事や学校、家庭生活、人間関係のプレッシャーが自律神経のバランスを乱す要因となります。
たとえば、長時間にわたるパソコン作業や、スマートフォンの使用による目や脳への負荷、睡眠不足などが続くと、交感神経が優位になりやすく、リラックスする時間が減ってしまいます。
これにより、常に体が緊張状態になり、疲れが取れない、イライラする、集中力が低下するなどの症状が現れることがあります。
また、自律神経が乱れると、具体的な身体症状として、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、胃の不調などが現れることがあります。特に、自律神経失調症と診断されることもあり、これには原因不明の疲労感や、睡眠障害、精神的な不安感などが含まれます。
このような状態は、自律神経の働きが不安定になっているために起こり、ストレスにさらされ続けると回復に時間がかかることが多いです。
また、自律神経の乱れが長引くと、慢性的な不調や生活の質が低下するだけでなく、うつ病やパニック障害などの精神的な病気につながることもあります。
これが、自律神経の乱れが放置できない理由です。自分で気をつけることも重要ですが、症状が強い場合は専門家の助けを借りることも必要です。
自律神経を自分で整えるには
自律神経を整えるためには、日常生活の改善が鍵となります。まず、自分に合った規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。
自分に合ったというところが非常に重要なポイントで以下に記すような所謂バランスのとれた生活習慣は大切なのですが、自分に合うものごとやリズムを感じられる状態であることが前提となります。
例えば、毎日同じような時間に寝て、同じような時間に起きることで、体のリズムが整い、自律神経のバランスが取り戻しやすくなります。
他にも体内時計を整えるためには、朝の光を浴びることや、適度な運動をすることも効果的と言われています。
1日20~30分のウォーキングやストレッチは、体の緊張をほぐし、交感神経の過剰な働きを抑えることができます。
ストレス管理も重要です。肉体的、または精神的ストレスが続くと交感神経が過剰に働き、副交感神経がうまく機能しなくなるため、リラックスできる時間を意識的に作ることが大切です。
例えば、趣味や好きなことに没頭する時間を持つこと、瞑想をしてリラックスすること、自然の中で過ごすことなどは、私がよくやっていることです。
特に、腹式呼吸は副交感神経を活性化させるため、自律神経を整えるためにおすすめの方法です。ゆっくりとお腹を膨らませるように深く息を吸い、ゆっくりと吐くことで、体全体がリラックスし、心も落ち着きます。
また、食生活の改善も忘れてはいけません。なるべく不要な添加物を避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。
一般的に自律神経の働きを整えるのを助けると言われているGABA、トリプトファン、ビタミンB群やマグネシウムを多く含む食品(例えば、玄米やトマト、乳製品、ナッツ類、魚など)を摂ることも推奨されます。
このように、日常の生活習慣を見直すことで、自律神経を整え、心身の健康を維持することができます。
できますが、自分に合うものごとやリズムを感じられる状態であることが前提であり、その自分に合った方法で少しずつ改善していくことが大切です。