自律神経と背骨の関係
自律神経の仕組みと背骨の役割
自律神経とは、私たちが意識的に制御できない体の機能を自動的に管理する神経のことで、心臓の鼓動や呼吸、消化など、 生命維持に欠かせない機能を24時間体制で管理しています。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つに分かれており、活動時には交感神経が、リラックスしている時には副交感神経が優位に働くことで、体の状態を調整しています。
自律神経は体全体に張り巡らされており、自律神経の指令塔である視床下部から出された指令は、背骨によって守られている脊髄を通って全身の臓器や器官に送られています。
つまり、背骨は体を支える大黒柱としての役割だけでなく、脳からの指令を全身に伝える脊髄を保護する通り道としての役割も果たしているのです。そのため、全部で24個ある背骨が、それぞれ正しい位置にあり健康な状態であることは、自律神経の働きを支える上で極めて重要です。
もし背骨が歪んでしまうと、その歪みによって自律神経の伝達に悪影響を及ぼすことがあることが過去の研究からも示唆されており、自律神経の働きに乱れを生じさせ、結果として体調不良を引き起こすことがあります。

背骨の歪みが自律神経に与える影響
背骨の歪みが自律神経に与える影響は非常に大きいと言われています。特に現代社会では多くの人が普段の姿勢の悪さや怪我による背骨へのストレスの結果、やがては自律神経の働きにも影響を受けています。
因みに、ここで言う怪我とは段差等でつまづいたり、頭をどこかに軽くぶつたりする程度の一般的には怪我とは言わないような小さな背骨への衝撃も含みます。
先ほどもお話しした通り、背骨は体を支える大黒柱としての役割だけでなく、脳からの指令を全身に伝える脊髄を保護する通り道としての役割も果たしているのです。
自律神経は、この脊髄を通じて全身に指令を出していますから背骨が歪んだり、不整列を起こすと自律神経の伝達に乱れが生じて、体全体のあらゆる働きに微妙な変調が起きます。具体的には、背骨の歪みは交感神経と副交感神経の働きに影響を及ぼします。
交感神経への影響
交感神経が過剰に働くと、心身が常に緊張状態に置かれ、心拍数の増加や血圧の上昇、筋肉のこわばりなどが引き起こされます。
このような状態が続くと、肩こりや頭痛、消化不良、不眠などの不調が慢性的に発生します。また、過度な交感神経の活動は、心身ともに疲労感を強め、体の回復力を低下させてしまいます。
副交感神経への影響
一方、副交感神経がうまく機能しないと、食べ物を消化吸収する働きが落ちたり、リラックスできる時間が十分に取れず、体が休むべき時にしっかり休めなくなります。
その結果、慢性的な消化不良のせいで活力が低下するだけでなく、夜間の睡眠の質が低下し、朝起きた時に疲れが取れない、日中にだるさや集中力の低下を感じるといった問題が現れます。

背骨の歪みが引き起こす主な症状(肩こり、頭痛、疲労感など)
背骨の歪みが進むと、不良姿勢により重心のバランスが崩れます。その結果、一方の肩が下がり気味になったり、骨盤に歪みが生じたり、左右の脚の長さの違いが生じたりします。
なぜなら、重心が崩れた状態では特定の筋肉の負担が増すことになり、過度な筋肉の緊張が慢性的に続いている筋肉では血流が悪くなり、肩こりや腰のこわばりが発生しやすくなります。それらが発端となり負荷が集中する箇所で徐々に痛みなどが引き起こされます。
たとえば、頻繁にスマホで何かをしている方や長時間デスクワークをしている方は、無意識のうちに前かがみの姿勢になりがちです。これにより首や背中、腰などの背骨や周辺の筋肉に負担がかかります。
この状態が慢性化し、特定の個所に負担が蓄積されると、背骨が不整列を起こし自律神経の伝達に乱れが生じて、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。
結果として、常に緊張状態が続き、リラックスできなくなるという悪循環に陥ります。この悪循環の先にあるのが一般的に言われる自律神経失調症という状態です。
骨格や内臓機能のバランスが崩れることで、気分の落ち込みやイライラ感が強くなり、精神的な不調も併発することがあるのです。多くの人が感じる「なんとなく疲れが取れない」という症状は、背骨の歪みが根本的な原因であることが少なくありません。
このように、背骨の歪みは自律神経に直接的な影響を与え、体調不良を引き起こす大きな要因となります。そのため、背骨の健康を保つことが、自律神経を整えるための重要なポイントとなるのです。
背骨と自律神経の健康

生活習慣の改善で背骨と自律神経を健康に保つコツ
正しい姿勢で動作すること
ここまでの話から分かるように、普段から正しい姿勢で動作することは、自律神経の働きを乱さないための重要な要素です。姿勢が悪いと、真っ先に負担が集中するのが背骨です。これが自律神経の働きに影響を及ぼすきっかけとなるからです。
ですから、日頃から正しい姿勢を保つことで、脊椎にかかる負荷が軽減され、周辺の筋肉へのアンバランスな負担がなくなり血流がスムーズになります。
そのような状態であれば、体は本来の働きを発揮しやすいので心身ともにリラックスでき、自己修正、自己回復が適切に行われて健康な状態を維持できるのです。
睡眠の習慣を整えること
誰もが取り組める生活習慣の改善としては、睡眠の習慣を整えることがあげられます。質の良い睡眠は、神経系を休息させることができ、体のリズムを回復させるために不可欠です。
就寝の2時間位前にはスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えることが大切です。寝る直前までこれらの電子機器を使用していると、交感神経が優位に働き続け、寝つきが悪く良質な睡眠の妨げとなることが分かっています。
深い呼吸を意識すること
さらに、日常的に深い呼吸を意識することも有益です。現代人の呼吸は、不良姿勢やストレスなど様々な要因で呼吸が浅く速いと言われています。深くゆっくりと呼吸をすることで、酸素をしっかりと体内に取り込みましょう。
また、呼吸は無意識のうちに働いている自律神経に対して、唯一意識的に働きかけることのできる運動です。深い呼吸を行うことで副交感神経を刺激してリラックス状態を作り出します。
背骨の健全性を高めるセルフケア方法(ストレッチ・運動)
背骨を良い状態で維持するためのセルフケアとしてはストレッチや軽い運動が効果的です。毎日の生活の中で意識的に背骨を動かすことで、周辺の筋肉に適度な刺激を与え、本来の柔軟な背骨の働きをサポートすることができます。
簡単にできるストレッチとして、両手、両膝をついた状態で背中を可能な範囲で丸めたり、反らしたりを数回繰り返す動作が効果的です。このストレッチは背骨の柔軟性を保ち、緊張した筋肉をほぐす効果があります。
これとは別に椅子に腰かけた状態で、首や肩をゆっくりと回す動作を数回繰り返すのも効果的です。首や肩周辺の筋肉に対して適度な刺激を与え、軽く伸ばすこともできるので、肩こりや頭痛の予防に役立ちます。
運動をするならウォーキングがおすすめです。ウォーキングは、腰や脚に不安が無ければ誰でも簡単に始めることができますし、全身の血流を促進し、背骨周辺の筋肉を適度に刺激することができます。
このように日常のちょっとした習慣を見直すことで、背骨と自律神経を健康に保つことが可能です。
良質な睡眠をとり心地よく目覚めるという生活リズムを整えたり適度な運動、正しい姿勢を維持することは、自律神経の働きに良い影響を与え、心身のバランスを整える助けになります。
自律神経と背骨に対するアプローチ
カイロプラクティックの有効性
カイロプラクティックは、背骨の歪みや姿勢の不良が自律神経に与える影響を緩和するために効果的なアプローチであることを示唆する論文(*1)もあります。
カイロプラクティックは手技により不整列を起こしている背骨に対して調整を行い、神経系の機能を回復させることを目的としています。神経系の機能の回復は、すなわち自律神経のバランスにも影響を与えます。
不良姿勢も、そのきっかけは小さな背骨の不整列(ズレ)から始まることが少なくありません。
たとえば、長時間のデスクワークやスマホの使用によって引き起こされる「ストレートネック」は、首の骨が前に傾き、背骨全体に負担をかける姿勢の問題です。
けれども、そもそも背骨に不整列が無ければ、このような姿勢の歪みが続いても自然と元に戻ることが可能ですが、背骨の不整列があると、歪みのあるバランスを欠いた状態が恒常化して首や肩の緊張が増したままの状態になります。
カイロプラクティックでは、手技を通じてこれらの不良姿勢を改善するきっかけを与えることができますが、何より重要なのは神経系の機能を回復によって一連の改善・回復が行われることです。
最新の医療技術で背骨の不整列を評価する方法

背骨の不整列や自律神経への影響を科学的に評価し、的確に改善するために、最新の医療技術が役立っています。特に、レントゲンやCT、赤外線センサーといった画像診断技術を用いることで、肉眼では確認しにくい背骨の微細な不整列や皮下の血流の状態を正確に把握できます。
カイロプラクティックは、最新の技術を用いた正確な評価と適切な手技によって背骨の不整列に対して働きかけ、自律的な身体機能の回復を促すことが期待できます。
*1)
Sympathetic and parasympathetic responses to specific diversified adjustments to chiropractic vertebral subluxations of the cervical and thoracic spine
Arlene Welch 1 , Ralph Boone, PMID: 19646369 PMCID: PMC2686395 DOI: 10.1016/j.jcm.2008.04.001
Atlas vertebra realignment and achievement of arterial pressure goal in hypertensive patients: a pilot study, Article in Journal of Human Hypertension, June 2007, DOI: 10.1038/sj.jhh.1002133, Source: PubMed